保育園には、やめられない行事がたくさんある
保育園には、たくさんの行事があります。
そして、そのどれもが「子どものため」「保護者が楽しみにしているから」「昔からやっているから」という理由で、続いています。だからこそ、行事を見直すというのは、とても難しいのです。「やめよう」と言い出すこと自体が、なんだか子どもを大切にしていないように聞こえてしまう。誰も、その一言を言い出せません。
でも、僕たちは、そこに向き合うことにしました。本当に子どものためになっているのか。職員の負担が、大きくなりすぎていないか。行事を一つひとつ、見直していったのです。
今日は、その中でも大きな二つ、夏祭りとお泊り保育の話をします。
三大行事だった夏祭りを、園内のごっこ遊びに
まず、夏祭りです。
これは、保護者会との共催で行う、園の三大行事の一つでした。規模も大きく、準備も大変な、まさに一年の目玉のような行事です。それだけに、職員の負担も相当なものでした。
この夏祭りを、僕たちは園内で行う「夏祭りごっこ」へと変えていきました。保護者会共催の大きなお祭りから、子どもたちが園の中で楽しむ、こぢんまりとした催しへ。もちろん、一年で急に変えたわけではありません。複数年をかけて、少しずつ形を変えていきました。
大切なのは、子どもたちの楽しみを奪わないことです。夏祭りごっこでも、子どもたちは十分に楽しめます。むしろ、大きな行事の準備に追われて職員が疲弊するより、余裕を持って子どもと向き合えるようになった分、良かったと思っています。
お泊り保育を、三年かけて段階的にやめる
もう一つが、お泊り保育です。
これも、思いきった見直しをしました。ただし、いきなりやめたのではありません。三年ほどかけて、段階的に変えていきました。
もともとは、外部の施設に泊まりに行く行事でした。それを、まず園内での宿泊に変えました。外部施設への移動や引率の負担が、ずいぶん減りました。そして三年後、お泊り自体を取りやめ、夜まで保育園で遊ぶ、という形に落ち着きました。
お泊り保育は、子どもにとって特別な思い出になる行事です。だからこそ、惜しむ気持ちもありました。でも、宿泊にともなう職員の負担や、安全管理の重さを考えたとき、「夜まで思いきり遊ぶ」という形でも、子どもたちにとって十分に特別な一日になる。そう判断したのです。
ちなみに、夏のプールも見直しました。年々ひどくなる暑さと、水の事故のリスクを考えて、水あそびを中心に切り替えたのです。本格的に泳ぎを楽しみたいときは、外部のスイミングスクールにお願いすることにしました。安全を第一に考えた結果です。
なぜ、抵抗なく変えられたのか
ここまで読んで、こう思う方もいるかもしれません。「そんな大きな行事を変えたら、反対の声が出たのではないか」と。
実は、抵抗は、ほとんどありませんでした。
理由は、はっきりしています。僕が一人で決めたのではないからです。
これらの見直しは、園長と主任がリードし、各クラスの担任やチーフの先生たちも一緒になって、みんなで考えて進めました。ホワイトボードに一つひとつの行事を書いた付箋を貼り、これは残すか、やめるか、軽くできるか。優先度をつけながら、チームで話し合ったのです。時間をかけて、みんなで。
だから、これは「上から押しつけられた変更」ではなく、「自分たちで決めた見直し」になりました。人は、勝手に決められたことには反発します。でも、自分が参加して決めたことには、納得して取り組めます。抵抗が生まれる余地が、そもそもなかったのです。
三つの立場から考える
研修講師として、事務長として、そして一人の管理職として。行事や慣習の見直しについて、三つのことをお伝えしたいと思います。
講師の立場から言えば、「昔からやっているから」は、続ける理由にはなりません。その行事が本当に必要か、誰のためのものか。ときどき立ち止まって問い直すことが大切です。惰性で続いているものは、どんな職場にも必ずあります。
事務長の立場から言えば、見直しは段階的に進めることです。夏祭りもお泊り保育も、一年で急に変えたのではなく、複数年かけて少しずつ形を変えました。急な変化は、子どもも保護者も職員も戸惑わせます。時間をかければ、みんなが少しずつ慣れていけます。
そして一人の管理職として言えば、絶対に一人で決めないことです。トップが一方的に「やめる」と号令をかければ、必ず反発が生まれます。現場を巻き込み、現場自身に考えてもらう。付箋を貼るのは、管理職一人ではなく、みんなで貼る。そうして初めて、抵抗のない、本物の見直しができるのです。
あなたの職場にも、「なんとなく続いている」行事や慣習は、ありませんか。それを見直すとき、大切なのは、一人で決めないこと。みんなで、時間をかけて。そこから、働きやすい職場への一歩が始まります。
福祉施設や企業での業務改善、働き方改革についての研修は、現役の事務長・経営者としての実体験をもとにお引き受けしています。アンガーマネジメントについては一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の公認講師として、イクボスや両立支援についてはこちら、福祉施設向けの研修についてはこちらもあわせてご覧ください。













