「採用と定着」シリーズも、今回で最終回です。ここまで5回にわたって、採用の難しさや、定着のための取り組みを、僕自身の経験から書いてきました。最後は少し視点を変えて、これから先の未来について、考えてみたいと思います。今回は、僕の実体験というより、日々の現場から感じている、一つの見通しの話です。
「人手不足」は、ずっと続くのか
今、世の中では、あらゆる業界で「人手不足だ」と言われています。人が採れない、人が足りない、と。僕自身も、前回まで書いてきたとおり、採用の難しさを、日々痛感しています。
でも、この「人手不足」が、この先もずっと続くのかというと、僕は、そうは思っていません。むしろ、業界によっては、近い将来、人手不足から「人余り」へと、大きく反転するのではないか。そう感じています。
少子化は、もう「川上」から始まっている
なぜ、そう考えるのか。理由は、少子化です。
第2回で、「学生そのものが減ってきている」と書きました。これは、とても象徴的な変化です。少子化の影響が、働き手が減るという形で表れる前に、まず「これから社会に出る若者の数」という、いちばん川上のところで、すでに始まっているのです。
そして、この影響を真っ先に、そして最も強く受けるのが、子どもを対象とする業界です。保育園やこども園、そして小学校、中学校、高校、大学、専門学校、学習塾。子どもの数が減れば、これらの現場で必要とされる人の数も、減っていきます。とりわけ、いちばん年齢の低い子どもを預かる保育の現場は、この波を、最初に受けることになります。今は人手が足りなくても、いずれ、子どもが減り、施設が減り、必要な人手も減っていく。人余りの時代が、静かに近づいているのです。
これからは、業界ごとに二極化する
ここで大切なのは、すべての業界が、同じ方向に進むわけではない、ということです。
これからは、人手不足がさらに深刻になる業界と、逆に人が余り始める業界とに、はっきり二極化していくと、僕は考えています。子どもに関わる業界は、人余りの側に傾いていくかもしれない。一方で、高齢者を支える介護のような分野は、当面、人手不足が続くでしょう。同じ「人材」の話でも、業界によって、状況はまったく逆になっていく。この二極化を、しっかり見据えておく必要があります。
もちろん、組織には、新しい人が入ってくる新陳代謝も必要です。だから、採用そのものは、続けていきたい。でも、今のやり方や、今の規模を、この先もずっと維持できるのか。そこには、正直、不透明な部分があります。未来は、誰にも分かりません。
管理職こそ、将来を見なければならない
未来は分からない。それでも——いや、分からないからこそ、僕がお伝えしたいことがあります。それは、今だけを見るのではなく、将来を見ながら、仕事にあたろう、ということです。
そして、これは、経営者だけの仕事ではありません。管理職こそ、先を読む目を持つべきだと、僕は思うのです。正直に言えば、これができている管理職は、まだ少ないように感じます。多くの管理職は、目の前の業務を回すことで、精一杯です。無理もありません。日々の仕事は、それだけで大変なのですから。将来のことまで考える余裕は、なかなか持てない。
僕自身は、経営者でありながら、管理職も務めています。実は、この両方を兼ねている人は、そう多くありません。だからこそ、経営者として先を見る視点と、管理職として現場を回す視点の、両方から物事を見る習慣が、自然と身につきました。その経験から、確信を持って言えます。これからの管理職には、現場を回す力だけでなく、先を読み、先取りする力が、求められると。変化が起きてから慌てて対応するのではなく、変化を予測して、先に手を打つ。その姿勢が、これからの時代を生き抜く、組織の力になります。
三つの立場から
僕は研修講師であり、保育園を運営する法人の事務長であり、会社を経営する立場でもあります。
講師の立場から見ると、これからの管理職研修には、「先を読む視点」を養う内容が、ますます必要になると感じています。目の前の課題解決だけでは、これからの時代は乗り切れません。
事務長の立場から見ると、これは覚悟の話です。今うまくいっていることも、いつまで続くか分からない。その前提で、常に次の手を考えておく。その緊張感を、持ち続けたいと思っています。
経営者の立場から見ると、これは、変化を恐れない、ということです。人余りの時代が来るとしても、それを嘆くのではなく、その中で何ができるかを考える。変化を、前提として受け入れる強さが要ります。
おわりに——シリーズを終えて
6回にわたって、採用と定着について書いてきました。紹介採用と公募の違いに始まり、資格職の難しさ、定着を分けるもの、職場環境の改善、そして上司の生き方。最後は、未来の話でした。
ふり返って思うのは、採用も、定着も、そして未来への備えも、簡単な正解などない、ということです。僕自身、いまだに悩み、試行錯誤の連続です。でも、それでいいのだと思います。大切なのは、答えが出ないことに悩みながらも、目の前の人を大切にし、将来を見据えて、変化し続けること。今だけでなく、その先を見る。現場を回しながら、未来を読む。そんな管理職が一人でも増えれば、これからの厳しい時代も、きっと乗り越えていけるはずです。長いシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。












