「採用と定着」シリーズ、5回目です。前回は保育園での取り組みを書きましたが、今回は、僕の会社、あきたこまちネットでの両立支援について書きます。ただ、制度やルールの話ではありません。もっと、僕自身の「生き方」に関わる、ちょっと不思議で、嬉しかった出来事の話です。
「うちの旦那が、本田さんの話を聞きたいって」
あるとき、スタッフから、こんなことを言われました。
「本田さん、うちの旦那が、本田さんの話を聞きたいって言うんです」
正直、驚きました。僕が「旦那さんを連れてきてよ」と頼んだわけではありません。スタッフのほうから、自分の夫を、僕に会わせたいと言ってきたのです。そして実際に、何人かのスタッフが、旦那さんを連れてきてくれるようになりました。家族ぐるみの付き合い、と言えるかもしれません。
これは、よく考えると、すごいことだと思うのです。
僕の生き方が、家庭にまで届いていた
なぜ、スタッフは、旦那さんを連れてきてくれたのか。
僕は普段から、イクメンのネットワークづくりや、ファザーリング・ジャパン東北での父親支援の活動をしています。子育てについての講演も、あちこちで行っています。スタッフは、そんな僕の活動を、よく知ってくれていました。そして、おそらく家で、旦那さんにも話していたのでしょう。「うちの職場の事務長さんが、こういう活動をしていてね」と。
それを聞いた旦那さんが、「その人の話を、聞いてみたい」と言う。つまり、僕の生き方や活動が、職場の中だけでなく、スタッフの家庭にまで届いていたのです。スタッフが、自分の職場の上司のことを、家族に誇らしく語ってくれていた。そう思うと、胸が熱くなりました。上司として、これほど嬉しいことは、なかなかありません。
家族みんなが、ハッピーになれたら
僕には、僕なりの、パパとしての働き方や、考え方、そして行動の積み重ねがあります。4人の子どもを育てながら、仕事もしてきた。その経験の中で得たものが、少しでも、そのご家庭のヒントになれば——僕は、そう思っていました。
旦那さんが、子育てや、夫婦の関わり方について、何か気づきを得てくれれば。夫婦げんかが、少し減るかもしれない。奥さん、つまり僕のスタッフが、家庭でも安心して過ごせるようになるかもしれない。そうすれば、家族みんなが、ハッピーになれる。そして、家庭が安定していれば、その人は、仕事にも安心して向き合える。回り回って、それは、職場にとっても良いことなのです。
両立支援というと、休暇制度や、時短勤務といった「仕組み」を思い浮かべがちです。もちろん、それも大切です。でも、それだけではない。働く人の背後には、必ず家族がいる。その家族ごと幸せになれるように関わることも、両立支援の、一つの形なのだと思います。
上司が、まず行動する
この出来事は、僕に、大切なことを教えてくれました。それは、上司が、どう生きているか。その背中こそが、最高の両立支援になる、ということです。
「両立しなさい」「家庭も大事に」と口で言うのは、簡単です。でも、言葉だけでは、人は動きません。それよりも、上司自身が、仕事も家庭も大事にする姿を、実際に見せる。子育てを楽しみ、家族を大切にしながら働く背中を見せる。そのほうが、ずっと説得力があります。
これは、僕が大切にしている「イクボス」の考え方の、まさに核心です。イクボスの心得の一つに、「自ら率先して行動する」というものがあります。上司が、まずロールモデルになる。すると、スタッフたちも、安心して、自分らしい働き方や生き方を選べるようになる。「あの人がやっているんだから、自分もいいんだ」と、思えるようになるのです。上司の背中は、何よりの、メッセージなのです。
三つの立場から
僕は研修講師であり、保育園を運営する法人の事務長であり、会社を経営する立場でもあります。
講師の立場から見ると、これはイクボスの実践そのものです。制度を整えるだけでなく、上司自身が生き方で示す。それが、職場の文化を変えていきます。
事務長の立場から見ると、これは信頼の話でもあります。家族ぐるみで付き合えるほどの信頼があれば、スタッフは安心して働ける。それが、定着にもつながっていきます。
経営者の立場から見ると、これは、働く人を「一人の人間」として見る話です。従業員としてだけでなく、家族を持つ一人の人として向き合う。その姿勢が、結局は、良い職場をつくるのだと思います。
おわりに
スタッフが、旦那さんを連れてきてくれる。この、ちょっと変わった出来事は、僕にとって、大きな誇りです。僕の生き方が、スタッフの家庭にまで、良い影響を届けられたのだとしたら、これほど嬉しいことはありません。
両立支援の答えは、制度の中だけにあるのではありません。上司であるあなた自身が、どう生き、どんな背中を見せるか。その中にも、確かに答えがあります。自ら、まず行動する。それが、スタッフを、そしてその家族までも、幸せにしていく。僕は、これからも、そういう背中を見せられる上司でありたいと思っています。次回は、いよいよこのシリーズの締めくくり。採用と定着の、その先にある未来について書きます。












