OJTは「教える場」ではなく「一緒に考える場」
前回の記事で、人材育成の80%はOJTだとお伝えしました。では、OJTを意識的に実践するとはどういうことでしょうか。
「マニュアルを見せながら業務を教える」「ミスを指摘して直させる」——これもOJTですが、それだけでは一担当者としての技術しか身につきません。
本当に意識的なOJTとは、スタッフが一つ上の視点を持てるようになる関わり方です。
「一担当者の視点」を超えた話をする
僕がスタッフとの日常会話で意識していることがあります。
一担当者の視点だけでなく、様々な視点を伝えること。
例えば、商品開発の話をするとき。「これはうまくいった、なぜなら〇〇だったから」「これは形にならなかった、理由は〇〇だったから」——過去の試行錯誤とその理由をそのまま伝えます。
スタッフは担当業務の範囲では経験できないことを、管理職との会話から学べます。失敗の理由、意思決定の背景、市場の変化——これらは業務マニュアルには書いていない、管理職だからこそ伝えられる知識です。
経営計画書をスタッフと共有する
以前は毎年「経営計画書」を作成し、スタッフ全員と共有していました。
あきたこまちネットの経営計画書には、ビジョン(経営理念)、ミッション、前年度の振り返り、今期のテーマと目標が書かれています。第9期のテーマは「誰かの役に立つ人でいよう」でした。
なぜ経営計画書をスタッフと共有するのか。それは、スタッフが「自分の仕事が会社全体のどこにつながっているか」を理解できるようにするためです。
自分の業務の意味が見えているスタッフと、見えていないスタッフでは、仕事への向き合い方が全く変わります。
幅広い視点を日常会話で伝える
経営計画書の共有だけでなく、日常の会話の中でも様々な視点を意識的に伝えています。
マーケティングの視点 「今の市場全体ではこういう動きがある」「競合他社はこういうアプローチをしている」「お客様の購買行動がこう変わってきている」——担当者が自分の仕事だけを見ていると気づけない視点を共有します。
地域・社会の視点 「日本全体の人口動態がこうなっている」「都市部と地方の格差がこう広がっている」「他県ではこういう取り組みが始まっている」——自分たちの事業を取り巻く社会の変化を伝えます。
政治・行政の視点 「県や市がこういう政策を進めている」「この法律改正がどう影響するか」——事業に関係する政策や制度の変化を、スタッフが理解できる言葉で共有します。
これらは「難しい話」ではなく、普段からの会話の中に自然に織り込んでいます。
なぜ幅広い視点が重要なのか
「そんな話をしても、スタッフには関係ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、幅広い視点を持つスタッフと持たないスタッフでは、仕事の質が変わります。
視点が狭いスタッフ:「指示されたことをやる」「自分の担当範囲だけを見る」
視点が広いスタッフ:「なぜこれをやるのかを理解している」「自分の仕事が全体にどう影響するかを考える」「先を見越して動ける」
視点の広さは、自分で考えて動ける人材を育てる土台になります。そしてこの視点は、特別な研修プログラムではなく、管理職との日常会話から育まれます。
意識的OJTのための3つの習慣
習慣① 業務の「なぜ」を必ず伝える
指示を出すとき、「何を」だけでなく「なぜ」を必ず添える。「この作業をしてほしい、なぜなら〇〇だから」——この一言が、スタッフの理解を大きく変えます。
習慣② 自分の判断プロセスを見せる
管理職が何かを決断するとき、「自分はこういう理由でこう判断した」を言語化してスタッフに伝える。スタッフは管理職の思考プロセスを学べます。
習慣③ 広い視点の話題を日常会話に混ぜる
市場の動き、地域の変化、業界のトレンド——難しい話ではなく、雑談のように自然に伝える。「最近こんなニュースがあって、私たちの仕事にはこう関係するかもしれない」という形で。
まとめ:管理職の「語り」がOJTになる
意識的なOJTは、特別な時間を作らなくても実践できます。
- 業務の背景と理由を伝える
- 自分の判断プロセスを見せる
- 幅広い視点を日常会話に混ぜる
管理職が持っている経験・知識・視点は、スタッフにとって貴重な学びの源です。それを意識的に共有することが、日常をOJTに変える最も実践的な方法です。
よくある質問
Q. スタッフに経営の話をしても興味を持ってもらえません。どうすればいいですか?
最初から経営の話をするのではなく、スタッフが日々感じている疑問や不満から入ることをおすすめします。「最近どう?」という雑談の中から、自然に視点を広げる話題につなげていくことが効果的です。
Q. 経営計画書はどのくらいの頻度で作ればいいですか?
年に一度が基本ですが、大切なのは作ることより共有することです。作った計画書をスタッフと一緒に読み合わせ、質問を受け付け、対話する機会を持つことで、スタッフの理解と参画意識が高まります。
Q. OJTを強化するための研修はありますか?
あきたこまちネットの研修・セミナーでは、管理職向けのOJT実践についてもお伝えしています。NPO法人ファザーリング・ジャパンのイクボス研修と組み合わせることで、日常のOJTの質をさらに高められます。
管理職向けの研修・セミナーのご案内はこちらからご確認いただけます。












