
2026年7月14日、大阪へ行ってきました。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社主催のセミナー「アンガーマネジメントに学ぶ! 管理職・リーダーのための部下育成・人間関係構築法」を受講するためです。
講師は戸田久実さん。アドット・コミュニケーション株式会社の代表取締役であり、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会のフェローです。僕自身、同協会の公認講師としてアンガーマネジメントを伝える側の人間ですが、この日は一受講生として席に座りました。
そして、教える側の人間が受講生の椅子に座ったからこそ見えたことがありました。今日はその話を書きます。
会場の様子
会場は大阪・梅田のハービスOSAKAオフィスタワー。大阪を中心とした中小企業の管理職・リーダー職の方々が、現地に約20名、オンラインで約10名。合わせて30名ほどが集まりました。朝10時から夕方5時まで、終日かけてアンガーマネジメントを学ぶプログラムです。
座学だけではありません。ディスカッションと実習が何度も繰り返されます。同じテーブルの方と意見を交わし、自分の内側を掘り下げる時間が繰り返しやってくる。この「他の管理職の方と直接話す」という時間が、僕にとって大きな意味を持つことになりました。
「対話」できているか、という問い
この日、僕の中に一番強く残ったのは「対話」というキーワードでした。
対話とは何か。僕なりに言葉にすると、役職の上下に関係なく、対等な会話ができているかどうかということです。上司と部下という関係であっても、そこに上下の圧がなく、対等に言葉を交わせているか。
僕は研修講師であると同時に、保育園を運営する法人の事務長でもあります。日々、職員に何かを伝える立場にいる。だからこの日は、講師としてではなく、一人の管理職として自分を振り返ることになりました。自法人で僕はどのように伝えているか。どのように指導しているか。そして、職員と本当に「対話」できているのか。
対等かどうかを決めるのは、自分ではない
ここで厄介なのが、ポジションパワーの存在です。
管理職には役職という力があります。こちらにその気がまったくなくても、上の立場の人間から何か言われれば、相手は萎縮する可能性が高い。同じ言葉でも、同僚から言われるのと上司から言われるのとでは、受け取る重さがまるで違います。
つまり、対等かどうかを決めるのは自分ではなく、相手なんです。「僕は対等に話しているつもりだ」と本人が思っていても、相手が萎縮していれば、それは対話ではありません。ここが管理職にとって、いちばん見落としやすい落とし穴だと思います。
だからこそ、指導するポイントがあるときは、アンガーマネジメントで学ぶ上手な叱り方の技術を使って伝える必要がある。技術は必要です。それは間違いありません。
同じグループの方の一言で、考え込んだ
ディスカッションの中で、同じグループになった方がこう話していました。「自分は上から怒鳴りつけることが多い」と。
正直に言うと、僕はこの言葉に少し驚きました。そして、そのあとしばらく考え込んでしまいました。
僕自身は、普段から職員に積極的に話しかけています。意図的に、たわいもない会話をするようにしている。だから「対等に話せているか」と問われれば、僕はできているほうだと思います。
でも、周りを見渡すと、そうではない管理職の方が少なくない。「対等」を強く意識しないと伝えられない人のほうが、むしろ多いのかもしれない。もしかしたら僕のほうが特殊なのではないか——そんなことを考えていました。
なぜ僕は対等でいられるのか
その場で自分に問い直してみました。なぜ僕は、職員と対等に話せていると感じているのか。特別な技術を使っているつもりはありません。
答えは、たぶんシンプルです。日常のたわいもない会話を、意図的に積み重ねているからです。
昨日の天気の話。子どもの様子。ちょっとした雑談。指導でも評価でもない、何でもない会話。僕はそれを意識してやっています。その蓄積があるから、いざ何かを伝えなければならない場面が来たときに、いきなり「上司の顔」にならずに済む。相手も身構えずに聞いてくれる。
逆に言えば、こういうことです。対等な対話は、指導のその瞬間に作れるものではない。日常の会話の蓄積が土台としてあって、初めてその上に成り立つ。怒鳴りつけてしまう人は、指導の瞬間だけを何とかしようとしているのかもしれません。でも、勝負はもっと前についている。
三つの立場から振り返る
講師の立場で見ると、戸田さんの伝え方はやはり勉強になりました。同じ内容を扱っていても、伝わり方がまるで違う。教える側の人間ほど、定期的に受講生の椅子に座るべきだと改めて感じました。自分の伝え方が固まっていないか、点検する機会になります。
事務長の立場で見ると、法人として管理職に何を求めるべきかを考えさせられました。叱り方の研修を用意することはできます。でも、日常のコミュニケーションが取れる職場の空気そのものは、研修だけでは作れません。ここは仕組みと風土の話です。
一人の管理職の立場で見ると、これは自分ごとの振り返りでした。僕は自分が対等に話せていると思っている。でも、それを判断するのは職員のほうです。この日以来、そのことを少し意識するようになりました。
管理職の方へ、僕からのアドバイス
この研修を受けて、管理職の方に一つだけお伝えするとすれば、これです。
日常の会話、日常のコミュニケーションこそが大事だということ。
叱り方の技術を学ぶことには、大きな意味があります。実際、この日のセミナーでもそこは丁寧に扱われました。ただ、その技術が本当に効くのは、対等な土台がある人のところです。土台がないまま技術だけを使っても、相手は萎縮したまま、言葉は届かない。
技術を学ぶ前に、あるいは学ぶのと同時に、今日から職員に話しかけてみる。何でもない話を、意図的にしてみる。地味ですが、これが一番効きます。僕自身、そうやってきたからこそ、今があると思っています。
おわりに
伝える側でありながら受講生として座った一日は、想像以上に学びの多い時間でした。人に教える立場になると、どうしても自分の伝え方を点検する機会が減ります。だからこそ、こうして外に出て学ぶ時間は大切にしたいと改めて思いました。戸田久実さん、そして主催の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの皆さま、ありがとうございました。
アンガーマネジメントについてより詳しく知りたい方は、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会のサイトをご覧ください。
あきたこまちネットでは、管理職・リーダー向けのアンガーマネジメント研修を全国オンライン対応で行っています。詳しくは管理職・リーダー研修のページをご覧ください。保育園・福祉施設で人材育成に関わる方は、保育士・保育園向けアンガーマネジメント研修のページもあわせてどうぞ。












