
スタッフから妊娠の報告を受けたとき、あなたは最初に何と言うでしょうか。
この「最初の一言」、そして「最初の表情」が、実はその後の関係性を大きく左右します。今日は、僕自身の経験と、かつて僕が心から尊敬したある施設長の話を通して、この最初の一瞬について書きたいと思います。特に、男性の管理職の方に読んでいただきたい内容です。
まず、男性管理職に理解してほしいこと
この記事は、女性のスタッフから妊娠の報告を受ける場面を想定して書いています。そして、男性の管理職にこそ、まず理解しておいてほしいことがあります。
女性が体に子を宿すということは、その人自身の身に、大きな影響が及ぶということです。体調の変化、出産へのリスク、これからの生活の変化。妊娠は、女性にとって相当な覚悟を伴う出来事なのです。
だからこそ、その報告は決して軽々しく受け取っていいものではありません。勇気を出して打ち明けてくれたその報告に、管理職がどう応えるか。ここに、その人の姿勢がすべて表れます。
結論から言えば、
全身全霊で「おめでとう」と、素直に喜んでほしいのです。
僕は、ためらったことがない
先に、僕自身のことを正直に書きます。僕はこれまで何度も、スタッフから妊娠の報告を受けてきました。そして、一瞬でもためらったことはありません。
これは僕の価値観の話です。僕自身が積極的に、主体的に子育てに関わってきました。そして、子どもは日本を支える未来そのものだと本気で思っています。だから、スタッフの妊娠は、僕にとって無条件に嬉しい報告なのです。「おめでとう」以外の言葉が出てくる余地がありません。
妊活を知っていた、あのスタッフの報告
忘れられない出来事があります。
あきたこまちネットでは、これまで3人のスタッフが、合わせて5回の出産を経験しています。その最初のスタッフから妊娠を打ち明けられたとき、僕は嬉しくて、涙が出ました。
なぜそこまで感情が動いたのか。それは、彼女が妊活をしていたことを、僕が知っていたからです。ずっと願っていたことが叶った。その報告だと分かっていたから、自分のことのように嬉しかった。自然と涙がこぼれていました。
この経験から、僕はあることに気づきました。
報告を受けたときに素直に喜べるかどうかは、普段からのコミュニケーションにかかっているということです。
日頃からそのスタッフのことを気にかけ、たわいもない会話を重ねていれば、その人の背景が見えてきます。何を願い、何を大切にしているのか。それが分かっていれば、妊娠の報告は「業務にどう影響するか」という話ではなく、「あの人の願いが叶った」という喜びとして受け取れる。日常の関わりが、いざというときの反応をつくるのです。
困る気持ちは、よく分かる
とはいえ、正直に言えば、妊娠の報告を受けたときに「困ったな」と感じる管理職の気持ちも、痛いほど分かります。
産休・育休でスタッフが一定期間いなくなれば、現場は確実に影響を受けます。誰が業務を引き継ぐのか。人員配置をどうするのか。責任感の強い管理職ほど、報告を受けた瞬間に、頭の中で計算が始まってしまう。
これは、決して悪いことではありません。現場を預かる者として当然の反応です。困る気持ちを持つこと自体を、僕は否定しません。
問題は、その気持ちが
顔に出てしまうかどうかです。
僕が尊敬した、ある施設長の話
ここで、忘れられないエピソードがもう一つあります。
かつて同じ職場に、ある施設長がいました。スタッフの一人から妊娠の報告があったとき、その施設長は本人に、満面の笑みで「おめでとう」と伝えました。心からの祝福に見えました。
ところが、その後です。管理職だけが集まった場で、その施設長は言いました。「困ったね」と。
誤解しないでください。これは冷たい発言ではありません。現場を回す責任者として、当然の実務的な心配です。人が抜ければ困る。それは事実なのですから。
僕が尊敬したのは、まさにこの
切り替えでした。本音では「困った」と思っている。それでも、本人の前では一切それを顔に出さず、笑顔で「おめでとう」と言いきった。本音を持つことと、それを本人にぶつけることは、まったく別のことです。あの施設長は、困る気持ちを抱えながらも、祝福の瞬間だけは完璧にやり遂げた。改めて、素晴らしいと思いました。
なぜ、最初の一瞬が決定的なのか
おそらく、一瞬でも「困ったな」という表情が出てしまう管理職は、少なくないと思います。そして本人は、その一瞬を見逃しません。
なぜなら、報告する側は、報告する前からずっと不安だからです。「迷惑だと思われないだろうか」「どんな顔をされるだろうか」。相当な覚悟を抱えて、勇気を出して報告している。だからこそ、こちらの最初の反応を、痛いほど敏感に読み取ります。
もし、そこで一瞬でも表情が曇れば、相手は「ああ、迷惑をかけてしまったんだ」と受け取ってしまう。そして、その記憶はずっと残ります。
最初の一瞬の反応が、その後の関係性に響いていくのです。
さらに、その影響は本人だけにとどまりません。管理職の反応は、他のスタッフにも伝わっていきます。微妙な顔をされたという話が広がれば、次に妊娠や育児の相談をしたいスタッフが、口を閉ざしてしまう。職場全体が、そうした話を切り出しにくい場所になってしまうのです。
三つの立場から考える
僕は研修講師であり、保育園を運営する法人の事務長であり、日々スタッフと関わる管理職でもあります。
講師の立場から見ると、これはアンガーマネジメントとも通じる話です。感情を持つことは自然です。大切なのは、その感情をどう表現するか。困る気持ちを抱えても、その場にふさわしい振る舞いを選べるかどうか。感情と行動を切り分ける力が、ここでも問われます。
事務長の立場から見ると、これは職場の文化の話です。妊娠や育児を安心して報告できる職場かどうかは、管理職一人ひとりの最初の一言の積み重ねで決まります。制度を整えることも大切ですが、その手前にある「空気」は、日々の反応がつくっているのです。
管理職の立場から見ると、これは自分への戒めでもあります。頭の中で業務の計算をしてしまうのは仕方ない。でも、それを顔に出すかどうかは、自分で選べる。ここは意識すれば必ずコントロールできる部分です。
では、どう振る舞えばいいのか
難しいことではありません。
報告を受けたら、間を空けずに、全身全霊で「おめでとう」と伝える。心から喜ぶ。それだけです。
産休・育休中をどうするかは、後から考えればいい。出産まではまだ時間がありますし、休みに入っても、長くても1年半ほどです。人員のことは、落ち着いてから、管理職同士でじっくり考えればいい。本人には、「これからの働き方について、改めて相談する時間を取ろうね」と後で伝えれば十分です。それは翌日でも、翌週でも遅くありません。
大切なのは、順番です。まず祝福。心配事は後回し。この順番さえ守れば、相手は安心して次の一歩に進めます。
おわりに
妊娠の報告は、その人の人生の大きな節目です。特に女性にとっては、大きな覚悟を伴う出来事です。その節目に立ち会う管理職の反応は、思っている以上に長く記憶に残ります。
僕自身は、子どもは未来そのものだと信じているので、ためらわずに喜べます。そして、普段からスタッフと関わっているからこそ、その報告を自分のことのように喜べる。あの日、涙が出たように。
たとえ心のどこかで「困ったな」と感じたとしても、それを顔に出さず、まず全身全霊で「おめでとう」と言いきる。困る気持ちは、あとで管理職同士で分かち合えばいい。本人に向けるのは、祝福だけでいいのです。そういう管理職であってほしいと、心から思います。
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