
同じ研修の案内を出しても、すぐに手を挙げる職員と、絶対に手を挙げない職員がいます。管理職をしていると、必ずぶつかる場面ではないでしょうか。
僕は研修を届ける講師であり、職員を研修に送り出す立場の管理職でもあります。両方の側に立っているからこそ、この「出たい人・出たくない人」問題については、いろいろと考えるところがあります。今日はその話を書きます。
研修に出たい人には、いくつかのタイプがある
これは統計でも何でもなく、僕が現場で見てきた範囲での実感です。研修に前向きな人には、いくつかのタイプがあるように感じています。
一つは、
純粋に自己研鑽の意欲が強い人。学ぶこと自体が好きで、機会があれば手を挙げる。
二つ目は、
コレクションが好きな人。「この研修に出たから、次はこれでコンプリート」という感覚で受講を重ねていくタイプです。少し意外に思われるかもしれませんが、これも立派な動機だと僕は思います。
三つ目は、
今まさに課題を感じている人。目の前に困っていることがあって、ちょうどそのタイミングで開催される研修に参加する。学びが一番身につくのは、おそらくこのタイプでしょう。
四つ目は、
特定の講師や内容に参加し続け、その道のスペシャリストを目指す人。実を言うと、僕自身がここに当てはまるかもしれません。
研修に出たくない人にも、理由がある
一方で、手を挙げない人にも理由があります。
一つは、
いい意味でも悪い意味でも、変わりたくないという気持ち。今のやり方でうまくいっているのだから、揺さぶられたくない。
二つ目は、
外部研修をつまらないと感じていること。これは正直に認めなければなりませんが、実際そういう研修もあると思います。講師の側にいる人間として、耳の痛い話です。
三つ目は、
ディスカッションが苦手だということ。最近の研修は、講義だけで完結する形式のほうが少なくなりました。グループワークや発表がほぼ必ず入ってきます。人前で話すことに強い抵抗がある人にとって、研修の案内は苦行の予告に見えるかもしれません。
講師として、正直に言わせてください
ここで一つ、講師の立場から本音を書きます。
会社から「行って来い」と言われて、嫌々参加している方。その受講態度は、正直なところ、場の雰囲気を悪くすることがあります。腕を組んで参加しない、明らかに関心のない様子でいる。同じ部屋には、自分の課題と向き合うために時間とお金を使って来ている人たちがいるんです。
そして何より、
本人が望まない研修は、時間とお金の浪費だと感じることがあります。受講料も、交通費も、その職員の勤務時間も、すべてコストです。本人に学ぶ気がなければ、何一つ残らずに消えていく。
ただ——ここが大事なところなのですが、これは受講者だけの問題でしょうか。
「行って来い」と送り出したのは誰か
嫌々参加している職員を作っているのは、実は
「行って来い」と送り出した管理職自身ではないか。僕はそう思うのです。
受講態度を責めるのは簡単です。でも、本人が望んでいない研修に、目的も伝えずに放り込んだ側の責任はどうなるのか。ここに触れずに「最近の若手は」と嘆いても、何も変わりません。
僕が事務長を務める法人では、保育士を研修に送り出すのは園長の業務なので、僕が直接決めているわけではありません。ただ、方向性ははっきりしています。
自分から行きたいという申し出があった場合を優先する。業務命令での研修受講は、ほとんどありません。
理由は先ほど書いたとおりです。本人が望まない研修は、意味がないからです。
では、手を挙げない職員はどうするのか
ここで、多くの管理職の方が引っかかると思います。手挙げ優先は理想論としては分かる。でも、それを徹底すると
いつも同じ顔ぶれになる。意欲のある職員だけが学び続け、手を挙げない職員は一生学ばない。組織全体の底上げという観点で、それを放置していいのか、と。
もっともな疑問です。僕なりの答えを書きます。
まず、割り切っている部分はあります。無理に引きずり出しても、先ほど書いたとおり浪費になるからです。
ただ、それだけではありません。手を挙げないからといって、
その職員が学んでいないとは限らないのです。本を読んでいるかもしれない。動画を見て学んでいるかもしれない。研修のスタイルは、今や本当に様々です。集合研修に出ることだけが学びではありません。
だから僕は、面談の際に確認を取るようにしています。責めるためではなく、知るためにです。「研修に出ていないね」ではなく、「最近どんなことを学んでいる?」と。
集合研修がすべてではない。この前提に立てるかどうかで、管理職の見え方はまるで違ってくると思います。
三つの立場から考える
講師の立場から見ると、手挙げで来てくれた受講者ばかりの研修は、本当にやりやすい。空気が違います。ただ同時に、「つまらない研修もある」という指摘は自分に返ってくる話です。嫌々来た人まで引き込めるかどうかは、講師の力量でもあります。
事務長の立場から見ると、これはコストの話でもあります。研修費用は限られています。同じ予算を使うなら、学ぶ気のある職員に使いたい。ただ、それが「同じ人にばかり投資する」ことになっていないかは、常に点検が必要だと思っています。
管理職の立場から見ると、いちばん大切なのは決めつけないことです。手を挙げない職員を「意欲がない」と分類した瞬間、その人の学びは見えなくなります。分類するのではなく、確認する。ここに尽きると思います。
送り出し方を変えるという選択
もう一つ、付け加えたいことがあります。
以前、訪問介護の事業所の方から「伝達研修」という取り組みを教わりました。外部研修に参加した職員が、戻ってきて全体にフィードバックし、その場で質問にも答えるという仕組みです。
この話を聞いたとき、僕は「研修の受け方そのものが変わるだろうな」と思いました。戻ったら全員に説明しなければならないと分かっていれば、聞き流せなくなるからです。
これは「行って来い」の対極にあります。目的なく送り出すか、意味を持たせて送り出すか。同じ研修に出しても、この差は決定的です。手を挙げない職員をどうするかを考える前に、送り出し方そのものを見直す余地があるのかもしれません。
よくある質問
Q. 手を挙げない職員に、業務命令で研修を受けさせるべきですか?
A. 僕は基本的に反対です。本人に学ぶ意思がない状態では、費用も時間も無駄になりやすく、場の雰囲気にも影響します。ただし、法令上必要な研修や、職責上どうしても必要な内容は別です。その場合も「なぜあなたに受けてほしいのか」を伝えることが最低限だと思います。
Q. 手挙げ優先だと、いつも同じ人ばかりになりませんか?
A. なりがちです。だからこそ、手を挙げない職員が別の形で学んでいないかを面談などで確認することが大切だと考えています。集合研修に出ないことと学んでいないことは、イコールではありません。
Q. 研修をつまらないと感じている職員には、どう対応すればいいですか?
A. その感覚は、必ずしも間違っていないかもしれません。過去に受けた研修が実際に合わなかった可能性があります。研修の種類や講師によって内容は大きく変わるため、その職員の課題に合った研修を一緒に探す姿勢が有効だと思います。
おわりに
研修に出たい人と出たくない人。この二つに分けて考えると、どうしても「出たくない人をどうするか」という話になりがちです。でも、その分類自体を一度疑ってみる価値があると、僕は思っています。
手を挙げないあの職員は、本当に学んでいないのでしょうか。もしかしたら、あなたの知らないところで本を読んでいるかもしれません。そして、嫌々参加しているあの職員は、どんな言葉で送り出されたのでしょうか。
管理職にできることは、分類することではなく、確認することだと思うのです。
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