保育士になりたくて、入ってきたはずなのに
女性ばかりの職場で管理職をしていると、あることに気づきます。
保育園で働く先生たちは、みんな、保育士になりたくて入ってきた人たちです。子どもが好きで、この仕事に就きたくて、資格を取って、ここへ来た。それぞれに、そういう思いがあります。
なのに、その先生たちが、辞めていく。しかも、保育が嫌になったからではなく、保育以外のことで疲れ果てて、辞めていくことがあるのです。
僕は、これがずっと、おかしいと思っていました。
保育以外の仕事が、人をすり減らす
保育園という職場には、保育以外の仕事が、実はたくさんあります。
重いものを運ぶ。冬になれば、駐車場の雪を寄せる。切れた蛍光灯を替える。ちょっとした修繕をする。どれも、保育とは関係のない仕事です。でも、誰かがやらなければ、園は回りません。
そして、こうした仕事は、力仕事だったり、高いところの作業だったり、汚れ仕事だったりします。女性が多い職場では、正直なところ、負担の大きいものばかりです。
問題は、これが積もっていくことです。保育をするために来たはずなのに、保育以外の負担が少しずつ心をすり減らしていく。気づけば、あんなに好きだったはずの仕事が、なんだか嫌になっている。そうやって、夢が壊れていくのを、僕は見たくありませんでした。
だから、僕がやる
そこで僕は、決めていました。保育以外の負担は、できる限り自分が引き受けよう、と。
重いものがあれば、運びます。雪が降れば、寄せます。蛍光灯が切れたら、替えます。修繕が必要なら、直します。そして、「これはやりたくない」という声が上がったら、その場ですぐに、自分がやりました。
誰かに頼まれたからでも、褒められたいからでもありません。先生たちには、保育に集中してほしかった。ただ、それだけです。
外から来た管理職の僕にできることは、立派なことを語ることではなく、こうして黙って体を動かすことでした。そして不思議なもので、この地味な積み重ねが、少しずつ、職員が心を開いてくれる一因になっていったように思います。
夢を壊さないということ
なぜ、そこまでするのか。理由は、はっきりしています。
先生たち一人ひとりの人生を、応援したいからです。
保育士になりたくて、この道を選んだ。その夢を、保育以外のことで壊してほしくない。雪かきに疲れて、力仕事に疲れて、それで保育が嫌になるなんて、あまりにもったいない。その人が就きたかったのは保育士であって、雑用係ではないのです。
だから、その人が本当にやりたかった仕事に集中できるように、それ以外の障害物を、僕が取り除く。管理職の仕事とは、案外そういうことなのではないかと、僕は思っています。
三つの立場から考える
研修講師として、事務長として、そして一人の管理職として。この経験から、三つのことをお伝えしたいと思います。
講師の立場から言えば、人が辞める理由は、その仕事そのものが嫌になったからとは限りません。むしろ、本業以外の負担に、じわじわとすり減らされていることが多いのです。だから管理職は、部下が「何に疲れているか」を、本業の外側にも目を向けて見る必要があります。
事務長の立場から言えば、部下がやりたくない仕事を、率先して引き受けることです。管理職だから偉そうにするのではなく、管理職だからこそ、一番泥臭い仕事に自分から手を出す。その姿は、どんな言葉よりも雄弁に、職員へ伝わります。
そして一人の管理職として言えば、部下の夢を守るのが、管理職の役割だということです。人はみな、何かをやりたくてその仕事に就いています。その「やりたかったこと」に集中できる環境を整え、それ以外の障害物を取り除く。それこそが、上に立つ者の仕事だと、僕は考えています。
あなたの部下は、その人が本当にやりたかった仕事に、集中できているでしょうか。
保育士にとっての保育のように、どんな仕事にも、その人が就きたくて就いた本業があります。その本業に、その人がまっすぐ向き合えるように、周りの負担を引き受ける。夢を応援する管理職であり、経営者であってほしいと思います。
そしてそれこそが、僕の考えるイクボスの姿でもあるのです。
アンガーマネジメントや管理職のあり方についての研修は、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の公認講師としてお引き受けしています。イクボスや両立支援についてはこちら、福祉施設向けの研修についてはこちらもあわせてご覧ください。












