「自分は大丈夫」が一番危ない|知らないうちに加害者になるハラスメントの境界線

ハラスメント研修を受けるべき人ほど、受けない

社会保険労務士の方からよく聞く話があります。パワハラで訴えられるケースのほとんどは、「自分がやっていることがハラスメントだと自覚していない」管理職だということです。

僕のアンガーマネジメントの師である戸田久実さん(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会フェロー、株式会社アドット・コミュニケーション代表取締役)も、同じことをおっしゃっています。ハラスメント防止研修に自主的に参加する人は、もともと意識が高い人がほとんど。本当に研修を受けるべき「自覚のない人」は、「自分は大丈夫」と思って参加しない、または参加しても「自分には関係ない」という認識をもっています。

このギャップが、次のハラスメントを生んでいます。


あなたは何種類のハラスメントを知っていますか?

厚生労働省が公表している資料には、30種類以上のハラスメントが挙げられています。

パワハラ、セクハラ、マタハラ——多くの管理職が知っているのはこの程度ではないでしょうか。しかし実際には、はるかに多くの種類が存在し、知らないまま日常的に行ってしまっているケースが少なくありません。

知っている管理職と知らない管理職の間には、大きな意識の差があります。この差こそが、ハラスメントを生む温床になっています。


今、特に注意したい「フキハラ」

数あるハラスメントの中で、今特に注目したいのが**フキハラ(不機嫌ハラスメント)**です。

フキハラとは、言葉を発さずに不機嫌な態度や雰囲気で周囲にプレッシャーを与える行為です。具体的にはこんな行動が挙げられます。

  • 部下の前でわかりやすく「はぁ……」とため息をつく
  • 提出された資料を見て、あからさまに貧乏ゆすりを始める
  • 不機嫌そうな表情や態度を周囲に見せつける
  • 返事を素っ気なくする、目を合わせない

これらに共通するのは、何も言っていないのに、相手を萎縮させるという点です。


なぜフキハラは見落とされやすいのか

パワハラのように暴言や叱責があれば、加害者本人も「言いすぎたかもしれない」と自覚しやすいものです。しかしフキハラは、言葉を発していないため、本人に加害している自覚が生まれにくいのです。

「ただ疲れていただけ」「機嫌が悪かっただけ」——本人にとっては些細なことでも、受け取る側は強いプレッシャーを感じます。

部下は、上司の機嫌を常にうかがうようになります。以前の記事でもお伝えしましたが、「上司の機嫌が悪そうなときは報告しない」という行動は、まさにフキハラが原因で起きていることが多いのです。

報告・相談が減り、職場の心理的安全性が損なわれる。フキハラは、言葉によるハラスメント以上に、組織にじわじわとダメージを与えます。


モラハラとパワハラとの違い

似たような言葉に「モラハラ」「パワハラ」がありますが、それぞれ少しずつ性質が異なります。

パワハラ:職務上の地位や人間関係の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為。怒鳴る、過度な叱責などが典型例です。

モラハラ:言葉や態度によって相手の人格や尊厳を傷つける行為。陰口、無視、人格否定などが含まれます。

フキハラ:不機嫌な態度や雰囲気によって、周囲に精神的負担を与える行為。言葉を介さない点が特徴です。

これらは重なり合う部分もありますが、いずれも「相手にどう受け取られるか」が判断基準になります。自分が意図していなくても、相手が苦痛を感じればハラスメントになり得ることを理解しておく必要があります。


ハラスメントの境界線を知るための第一歩

「自分は大丈夫」という思い込みを手放すことが、ハラスメントを防ぐ第一歩です。

詳しくは厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」もご参照ください。

  • 自分の表情、態度、ため息が周囲にどう映っているかを意識する
  • 不機嫌なときこそ、感情を表に出さない工夫をする
  • 厚生労働省の資料などで、ハラスメントの種類を一通り知っておく

これまでの記事でお伝えしてきたアンガーマネジメントの「6秒ルール」や「思考のコントロール」は、フキハラを防ぐ上でも有効です。不機嫌な感情が態度に出る前に、一度立ち止まる習慣が、ハラスメントの予防につながります。


まとめ:知ることが、加害者にならないための防御策

「自分は大丈夫」と思っている人ほど、実は危ういということを、改めてお伝えしたいです。

ハラスメントは、言葉だけでなく態度や雰囲気からも生まれます。特にフキハラは、本人の自覚なく職場の空気を壊し続けてしまう厄介な存在です。

まず知ること。そして自分の言動や態度を振り返ること。これが、知らないうちに加害者にならないための、最も確実な防御策です。


よくある質問

Q. 自分が不機嫌な態度を取っていないか、どう確認すればいいですか?

家族や信頼できる同僚に「最近、不機嫌に見えることはある?」と率直に聞いてみることが効果的です。自分では気づきにくい癖は、周囲からのフィードバックが一番の手がかりになります。

Q. 疲れているときに不機嫌な態度が出てしまいます。どう対処すればいいですか?

疲れていることを正直に言葉にすることをお勧めします。「今日は少し疲れていて、態度に出てしまうかもしれない」と一言伝えるだけで、部下の受け取り方は大きく変わります。

Q. ハラスメントについて体系的に学ぶにはどうすればいいですか?

厚生労働省の「あかるい職場応援団」サイトでハラスメントの種類を確認できます。また、研修・セミナーページでは、ハラスメント防止とアンガーマネジメントを組み合わせた研修もご提供しています。


管理職向けのハラスメント防止・アンガーマネジメント研修のご案内はこちらからご確認いただけます。

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