「私の頃は」という言葉が、職場の空気を壊す
「私の頃はもっと大変だった」「今の子たちは恵まれている」——育休や介護休業を取得するスタッフに対して、こういった言葉をかける先輩社員がいます。
悪意がないことは理解しています。自分の経験を話したいだけかもしれない。しかし受け取る側には、「早く戻ってこい」「甘えるな」というプレッシャーとして届きます。
僕はこういった場面で、立ち話のタイミングを使ってこう伝えます。
「本当にそうでしたか?周りにサポートしてもらっていたでしょ?どの時代でもサポートがないと子育ても介護もできなかったはずですよね。それと、今は昭和じゃないので」
強い言葉かもしれません。でも、これを伝えないと変わらない。
永六輔さんの言葉が、僕のモットー
僕が両立支援の考え方の根底に置いているのが、永六輔さんのこの言葉です。
「子供叱るな 来た道だもの 年寄り笑うな 行く道だもの 来た道 行く道 二人旅 これから通る 今日の道 通り直しのできぬ道」
自分も子育てをしてきた、いつか介護をする日が来るかもしれない。誰もが「来た道・行く道」を歩んでいます。
だからこそ、今その道を歩んでいる人を「お互い様」の気持ちで支えられる。この感覚が職場に根づけば、育休取得者への冷たい視線も、介護休業への理解不足も、自然に変わっていきます。
「お互い様」は、日常の立ち話から育てる
「お互い様の文化をつくりましょう」と朝礼で宣言しても、職場の空気は変わりません。改まった場で伝えると、相手も距離を感じてしまいます。
僕が意識しているのは、日常の立ち話の中で伝えることです。
廊下ですれ違ったとき、休憩室で一緒になったとき——そういったさりげない場面で、「そういえば昔も助けてもらってたよね」「お互い様だから大丈夫だよ」と声をかける。これを繰り返すことで、職場の空気はじわじわと変わっていきます。
文化は、制度や宣言ではなく、日常の会話の積み重ねで育ちます。
「お互い様」の気持ちがあれば、いざこざは起きない
正直に言います。
スタッフが本当に「お互い様」の気持ちを持てたなら、職場のいざこざのほとんどは起きません。
育休取得者への不満、介護休業中の業務負担への愚痴、世代間の価値観のぶつかり合い——これらはすべて、「なぜ自分だけが」という感情から生まれます。「自分もいつか同じ立場になる」「自分も助けてもらってきた」という視点があれば、この感情は和らぎます。
だからこそ、アンガーマネジメントや各種コミュニケーション研修が大切だと思っています。感情のコントロールを学ぶだけでなく、「なぜお互い様なのか」という視点を身につけることが、職場文化を変える土台になります。
人は頼り、頼られる関係にある
管理職と部下の関係は、一方通行ではありません。
指示する、報告する、共有する——どれも一方向に見えますが、本来は一つの目的に向かってみんなで助け合い、支え合い、分かち合う関係です。
「人は頼り、頼られる関係にある」——この言葉が職場全体に浸透したとき、両立支援は制度ではなく文化になります。育休取得者を誰かが支える。その人もいつか誰かを支える。この循環が、強い職場をつくります。
まとめ:両立支援の最後の鍵は「文化」
産休・育休の制度、介護休業の制度、管理職の関わり方——これまで3回にわたってお伝えしてきた両立支援のテーマを、今回でまとめます。
制度を整えること、管理職が率先して関わること、そして**「お互い様」の文化を職場に根づかせること**。この3つが揃って初めて、本当の意味での両立支援が実現します。
「来た道・行く道」——誰もが歩んできた道、これから歩む道があります。だから支え合える。この視点が、職場を変える一番の力になります。
よくある質問
Q. 「お互い様」の意識を職場に広めるには、どこから始めればいいですか?
まず管理職自身が「お互い様」の言葉と行動を日常の中で示すことから始めましょう。「私もかつて助けてもらった」「いつか自分も同じ立場になる」という言葉を、改まった場ではなく日常の立ち話の中で伝えることが、文化づくりの第一歩です。
Q. 先輩社員が「私の頃は」と言い続ける場合、どう対処すればいいですか?
感情的に否定するのではなく、「その頃も周りに助けてもらっていましたよね」と過去の経験を肯定しながら視点を変える伝え方が効果的です。「あなたの経験は大切だけど、今は時代が変わっている」というメッセージを、穏やかに繰り返し伝えることが大切です。
Q. アンガーマネジメントと両立支援はどう関係していますか?
「なぜ自分だけが負担を負うのか」という怒りの感情が、職場のいざこざを生みます。アンガーマネジメントを学ぶことで、この感情をコントロールし、「お互い様」という視点に切り替えやすくなります。日本アンガーマネジメント協会やあきたこまちネットの研修でも、職場の両立支援とアンガーマネジメントを組み合わせてお伝えしています。
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